- ビタミンDって、どんな食品に多いの?
- どれくらい摂ればいいの?
そんな疑問はありませんか?
骨を強くしたいと思ったとき、「カルシウムを摂ることが大切」とはよく知られていますよね。
それと同時に「ビタミンDも摂った方が良い」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、カルシウムは牛乳や小魚などでイメージしやすい一方で、「ビタミンDはどんな食品に多く含まれているのか、よく分からない」という方も少なくありません。
そこでこの記事では、管理栄養士の視点から、ビタミンDの働きや多く含まれる食品、効率よく摂るコツなどをわかりやすく解説していきます。

管理栄養士 こま
- 30代の管理栄養士
- 急性期病院3年・給食委託会社8年
- 病院(2施設)とクリニックで栄養指導経験
- 1日平均4万食提供の委託給食の献立作成を担当
- 関西・関東の病院を中心とした給食提供実績
効率的に骨の健康をサポートしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ビタミンDとは?どんな役割がある?

ビタミンDは、油に溶ける脂溶性ビタミンの一つで、丈夫な骨や歯をつくるために欠かせない栄養素です。
食品から摂取できるほか、紫外線を浴びることで皮膚でも合成されます。これらの両方から得られたビタミンDが、体内で利用されます。
ビタミンDの主な働きは、次の2つです。
カルシウムの吸収をサポート
ビタミンDは腸や腎臓でカルシウムの吸収を促進します。カルシウムはもともと吸収率が低いため、ビタミンDを十分に摂り、血中のビタミンD濃度を保つことで、小腸での吸収がより効率的になります。
※必ずしもカルシウムとビタミンDを同じタイミングで摂る必要はありません。
細胞の分化促進・増殖抑制作用
ビタミンDには、骨髄や免疫系の細胞、皮膚、乳腺、前立腺、筋肉、腸など、さまざまな細胞における分化を促進し、過剰な増殖を抑える働きがあります。
管理栄養士 こまビタミンDが欠乏すると骨粗鬆症・骨折のリスクが高まるため、日光浴や食事からしっかりビタミンDをとることが大切です。
ビタミンDが多い食べ物とは?


ビタミンDは、主に魚やきのこに多く含まれています。
特に魚は、カルシウムも多く含まれているので、骨を強くしたい方にとって、カルシウムとビタミンDが同時にとれ、おすすめです。
魚類
魚は、ビタミンDを最も効率よく摂取できる食品です。
なかでも、特にビタミンDが豊富な魚は次の通り。
| 100gあたり | ビタミン(µg) |
| まるあじ 生 | 19.0 |
| いかなご 生 | 21.0 |
| まいわし 生 | 32.0 |
| しらす干し 半乾燥 | 61.0 |
| うなぎ 生 | 18.0 |
| くろかじき 生 | 38.0 |
| そうだがつお 生 | 22.0 |
| かわはぎ 生 | 43.0 |
| からふとます 生 | 22.0 |
| ぎんざけ 生 | 15.0 |
| しろさけ 生 | 32.0 |
| イクラ | 44.0 |
| べにざけ 生 | 33.0 |
| キングサーモン 生 | 16.0 |
| さんま 生 | 16.0 |
| しまあじ 生 | 18.0 |
| にしん 生 | 22.0 |
| くろまぐろ 生 脂身 | 18.0 |
たとえば「すけとうだら」などの魚は、100gあたりわずか0.5µgとビタミンDの含有量がとても少ないです。
そのため、ビタミンDを摂るには魚の選び方も重要です。
きのこ類
きのこも、ビタミンDを摂取するのに適した食材のひとつです。植物性の食品の中でビタミンDを含むのは、きのこのみ。
中でも、ビタミンDを多く含むきのこは次の通りです。
| 100gあたり | ビタミン(µg) |
| あらげきくらげ 乾 | 130.0(ゆで25.0) |
| きくらげ 乾 | 85.0(ゆで8.8) |
| しろきくらげ 乾 | 15.0(ゆで1.2) |
| 乾しいたけ | 17.0(ゆで1.4) |
| うすひらたけ 生 | 2.4 |
| エリンギ 生 | 1.2 |
| まいたけ 生 | 4.9 |
きのこの中でもきくらげのビタミンD含有量はダントツです。



穀類・いも・豆・種実・野菜・果物・海藻にはビタミンDはほぼ含まれていません。
ビタミンDの1日の摂取量は?


ビタミンDは1日にどれくらい摂るのがいいのでしょうか?
ビタミンDの1日の目安量は以下の通りになっています。
| 目安量 | 男性(µg) | 女性(µg) |
| 0~11ヶ月 | 5.0 | 5.0 |
| 1~2歳 | 3.5 | 3.5 |
| 3~5歳 | 4.5 | 4.5 |
| 6~7歳 | 5.5 | 5.5 |
| 8~9歳 | 6.5 | 6.5 |
| 10~11歳 | 8.0 | 8.0 |
| 12歳以上 | 9.0 | 9.0 |
成人のビタミンDは男女一律9.0μg/日です。
ビタミンDは、紫外線を浴びることで皮膚でもつくられるため、この「目安量」は日光にある程度当たることを前提として設定されています。
そのため、ビタミンDの目安量を食事で満たしていても、まったく紫外線を浴びない場合には不足する可能性もあります。



健康のためには、適度な日光浴も大切です。
日本人のビタミンD摂取量は不十分
日本人の実際のビタミンD摂取量はどのくらいなのでしょうか。
令和5年の国民健康・栄養調査によると、20歳以上のビタミンDの平均摂取量は6.5μg/日でした。
成人の目安量である9.0μg/日と比べると、不足している状況がうかがえます。
骨粗鬆症などの骨の健康に関わる疾患が増加傾向にある中、カルシウムとあわせてビタミンDの摂取にも注目することが大切です。
ビタミンDは過剰摂取にも注意が必要
ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、体内に蓄積されやすく、実は過剰摂取にも注意が必要です。
紫外線によるビタミンDについては、皮膚で産生量が自然に調整されるため、日光に当たりすぎても過剰になる心配はありません。
しかし、食品から摂りすぎた場合には、過剰症を引き起こすおそれがあります。
ビタミンDを摂りすぎると、次のような健康障害が起こることがあります。
- 高カルシウム血症
- 腎機能障害
- 軟組織の石灰化
食事からのビタミンDには「耐容上限量(これ以上摂取すると健康に悪影響が出る可能性のある量)」が以下の通り設定されています。
| 耐容上限量 | 男性(µg) | 女性(µg) |
| 0~2歳 | 25 | 25 |
| 3~5歳 | 30 | 30 |
| 6~9歳 | 40 | 40 |
| 10~11歳 | 60 | 60 |
| 12~14歳 | 80 | 80 |
| 15~17歳 | 90 | 90 |
| 18歳以上 | 100 | 100 |
ビタミンDをとる際は、この耐容上限量を超えないように。ただし成人の場合、耐容上限量は目安量の10倍以上に設定されています。そのため、通常の食事だけでこの量を超えてしまうことはほとんどありません。



サプリメントなどで簡単に多く摂取できてしまう場合に、過剰摂取にならないように注意が必要です。
ビタミンD9.0µg/日が摂れる食事内容の例


1日に必要とされるビタミンD 9.0µgは、実は思っているよりも簡単に摂取できます。
例えば、鮭1切れ(約80g)を食べるだけで、ビタミンD約25.6µgを摂取できます。魚から摂取する場合は、ビタミンDの多い魚を1食取り入れるだけで1日の目安量を十分に満たせることも多いです。
一方、きのこ類からメインで摂ろうとすると、やや難しいかもしれません。たとえばビタミンDが特に豊富なきくらげでも、1回の食事で使う量(ゆで20g程度)ではビタミンDは約5µgほどになります。
とはいえ、栄養素の摂取量は数日間の平均で考えることが多いです。そのため、日ごろから積極的に魚を取り入れ、魚を食べない日はきのこ類で補うなどの工夫で上手に摂ることができます。
日本食は本来、魚を多く取り入れることで栄養バランスに優れているとされていますが、近年は魚の摂取量が減少傾向にあります。この機会に、もう一度魚を意識的に食事に取り入れる習慣を見直してみるのも良いでしょう。
ビタミンDを効率よく摂るコツ


ビタミンDを上手に摂るには、次のポイントを意識すると効果的です。
- 魚料理を週に2~3回取り入れる
- きのこは日干しを選ぶ
- 油と一緒に食べる
- 冬は特に意識的に摂取する
- 適度な日光浴を取り入れる
魚料理を週に2~3回取り入れる
ビタミンDを上手に摂るためには、魚を積極的に食事に取り入れることが大切です。
魚は他の食品と比べて、圧倒的にビタミンDを多く含んでいる優秀な食材です。とくに、普段あまり魚を食べる機会が少ない人はビタミンD不足になりやすい傾向があります。
週に2〜3回を目安に、焼き魚や煮魚、缶詰などを上手に活用してみましょう。



なかでも鮭は一年を通して手に入りやすく、調理もしやすいのでおすすめです。
きのこは日干しを選ぶ
きのこは、生の状態よりも乾燥させたきのこの方がビタミンDを多く含んでいます。
例えば、椎茸のビタミンD含有量は以下の通りです。
| 100gあたり | ビタミン(µg) |
| 生しいたけ | 0.3 |
| 乾しいたけ | 17.0 |
| 乾しいたけ 茹で | 1.4 |
生しいたけと比べると、乾しいたけは圧倒的にビタミンDが多く、茹でてもなお、生しいたけの約4.5倍含まれています。効率よくビタミンDを摂るなら、乾燥しいたけを活用するのがおすすめ。
さらに、乾燥方法にも差があります。日干しされたしいたけは、通常の乾燥よりビタミンDを多く含むため、購入時にはパッケージをチェックして日干しかどうかを確認すると良いでしょう。



干しきのこを戻した汁にはビタミンが溶け出しているため、料理に活用すると栄養を無駄なく摂取できておすすめです。
油と一緒に食べる
ビタミンDは脂溶性のビタミンなので、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。
茹でるよりも、炒める・揚げるなど油を使った調理法で取り入れると、より効率的に摂取できます。
冬は特に意識的に摂取する
ビタミンDは、冬に特に意識して摂ることが大切です。
冬は夏に比べて紫外線の量が少なくなるため、皮膚でのビタミンD生成が減少するからです。
そのため、冬の間は食品から積極的にビタミンDを摂ることを意識して、必要量をしっかり補いましょう。
適度な日光浴を取り入れる
ビタミンDの1日の食事摂取目安量は、適度な日光浴があることを前提に定められています。効率よくビタミンDを確保するためにも、日光浴を取り入れましょう。
ただし、日光浴の目安時間は、日本国内でも住んでいる場所や季節によって変わります。
- 北に行くほど紫外線が弱くなるため、推奨される日照時間は長くなる
- 南に行くほど紫外線が強く、短時間でも十分
自分に合った日光浴の時間を知るには、以下のサイトが参考になります。
ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報|国立環境研究所 地球環境研究センター



ちなみに私の場合、大阪局のデータを参考にして、11月で顔と手だけを露出した場合、晴れた午前10:30頃に必要な日光浴時間は約27分でした。
ビタミンDのよくある質問(Q&A)


ビタミンDは、サプリメントでの補給は必要?
基本的には、サプリメントを利用しなくても食事と日光浴で十分にビタミンDはとれます。
しかし、以下のような場合は、サプリメントの利用を検討してもよいでしょう。
- 魚などのビタミンDを含む食品をあまり食べない人
- 日光をほとんど浴びない生活をしている人
- 高齢者や骨粗しょう症のリスクがある人
ただし、ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、摂りすぎると体内に蓄積しやすい性質があります。
サプリメントを使う場合は、用量を守り、医師や管理栄養士に相談することが大切です。
日光浴をしていれば、食品からのビタミンDは摂らなくてももいい?
日光を浴びることで、皮膚でビタミンDを合成することができます。
しかし、季節・天候・生活スタイルなどによって、十分に合成できないこともあります。
たとえば──
- 冬や曇りの日が多い地域
- 屋内で過ごす時間が長い人
- 日焼け止めを常に使用している人
などは、日光からの合成量が不足しやすいのです。そのため、日光+食品の両方からビタミンDをとるのが理想的です。
魚や干しきのこなどを日常的に取り入れることで、季節に関係なく安定してビタミンDを確保できます。
まとめ:ビタミンDはバランスの良い食事から摂ろう!


この記事では、ビタミンDの働きや多く含まれる食品、効率よく摂るコツなどを解説しました。
要点をまとめると以下の通り。
- カルシウムの吸収を高める働きがある
- 紫外線を浴びることで肌で合成される
- 多く含まれる食品は魚ときのこ類
- 成人の1日の目安量は約9.0μg
- 食品からの摂取は過剰にならないよう注意
- 食品と日光浴の両方から摂ることが理想
近年は、骨粗鬆症のリスクがある人や高齢者が増えており、カルシウムだけでなく、ビタミンDの摂取も重要です。
まずは、魚の摂取を意識的に増やすことがおすすめ。
その他、きのこ類も上手に取り入れ、毎日適度な日光浴も心がけましょう。



こうした習慣を組み合わせることで、無理なくビタミンDをしっかりと摂取できます。












