- 食品添加物って体に悪いんでしょ?
- できるだけ摂らない方がいいんじゃない?
- そもそも、食べても本当に大丈夫なの?
こんな疑問を抱いたことはありませんか?
今や、スーパーやコンビニで売られている多くの加工食品には、食品添加物が含まれています。完全に添加物を避けた食生活を送るのは、現実的にかなり難しい時代です。
「食品添加物=体に悪い」という情報を目にすることも多く、不安に感じている方も多いと思います。実際、「無添加」と書かれている商品を見ると、ついそちらを選んでしまうこともありますよね。
もしかすると、私たちは誤った情報に振り回されているだけかもしれません。
そこでこの記事では、管理栄養士の視点から「食品添加物は本当に体に悪いのか?」について、科学的根拠に基づいてわかりやすく解説していきます。
この記事を書くにあたり、参考にした主な情報源は以下の通り。
- 近畿農政局主催セミナー「食品添加物~その役割と安全性~」
- 全国栄養士大会「食の安全の落とし穴~食のリスクを正しく理解する~」
- 書籍(日本栄養士会推薦):よくわかる食品添加物
- 書籍(日本栄養士会雑誌で紹介):食の安全の落とし穴
信頼できる公的機関や専門家の情報に基づいてお伝えします。
この記事を読むことで、食品添加物について正しく理解し、正しい知識にもとづいた賢い食品選びができるようになります。
「無添加じゃないと不安」「選ぶのがしんどい」と感じている方こそ、ぜひ最後まで読んでみてください。
食品添加物は体に悪い?その不安の正体と広まっているイメージ

「食品添加物は体に悪い」
──そんなイメージを持っていませんか?
管理栄養士 こま実は、管理栄養士である私自身も、そうした印象を持ってしまっていることは否定できません。
具体的には、以下のようなイメージなどがありますよね。
- 発がん性があるらしい
- 海外では禁止されている添加物が日本では使われている
- 子どもには絶対に食べさせたくない
ネット記事やSNS、テレビなどでも「危険な食品添加物○選」「絶対に避けたい添加物リスト」といった情報をよく見かけます。その影響で、「食品添加物=体に悪いもの」というイメージが、私たちの中に強く根付いているのは事実です。
「無添加」と書かれた商品を見かけると、「こっちの方が体に良さそう」と、つい手に取ってしまう方も多いのではないでしょうか。
ただし、注意すべきなのは、本来は無添加が当たり前の食品にまで「無添加」とわざわざ表示し、あたかも他の商品より安全であるかのように見せているケースが実際にあることです。
中には、「食品添加物=体に悪い」という印象を強調することで、「無添加」商品を売りやすくしようという企業側の戦略が働いている場合もあります。
こうした状況だからこそ、目先のイメージや言葉に振り回されず、「本当に正しい情報は何か?」を知ることが大切です。
「食品添加物は危険」は本当?嘘だと言える科学的根拠とは


体に悪いイメージが根付いてしまっている食品添加物ですが、その使用方法や制度を知ることで、安易に「悪い」とするのは間違った情報であるのが分かります。
「食品添加物=体に悪い」ではない理由は、以下の通り。
- 安全性は国がしっかり評価している
- 種類や量がきちんと管理されている
- 長期的な体への影響も調べられている
安全性は国がしっかり評価している
日本で使用されている食品添加物は、内閣府の食品安全委員会によって、科学的根拠に基づいた厳格な安全性評価が行われています。
中でも重要なのが「許容一日摂取量(ADI)」という考え方です。これは、「人が毎日一生食べ続けても健康に影響が出ない」とされる添加物の摂取量の基準のこと。
ADIは、まず動物実験などから「毒性が見られなかった量(無毒性量)」を求め、そこから動物と人間の違いや個人差などを考慮して、さらに100分の1の量にまで安全マージンをかけて設定されます。
つまり、実際に摂る量は、人体に害がないとされる量の1/100以下に抑えられているのです。さらに、食品添加物の基準値は、そのADIよりも、さらに厳しい基準で定められています。
「ちょっとでも毒性があるのはイヤだ」と感じる方もいるかもしれませんが、実は、「100%安全な食品」というものは、添加物に限らず存在しません。
どんな天然の食品にも、少なからず体への影響やリスクはあります。
たとえば、ハムやソーセージなどに使われる発色剤の「亜硝酸塩」が発がんリスクがあると言われることもあります。しかし、実は天然の野菜などにも硝酸塩がたくさん含まれているのです。
天然のものに含まれるものは許容して、加工食品にごく少量含まれるものは問題視するのはおかしいですよね。
大事なのは「どれだけ摂るか」「安全性の評価がなされているか」です。むしろ、食品添加物は科学的な根拠に基づいて、安全性が細かく確認され、使用許可されているもの。
その意味では、「なんとなく体に良さそうな天然の食品」よりも、実は安全性が保障されている可能性すらあるのです。
種類や量がきちんと管理されている
食品添加物は、食品衛生法という法律のもとで、厳しく管理されています。
その管理項目は多岐にわたり、以下のようなものが定められています。
- 使用できる添加物の種類
- 成分の規格基準
- 使用できる食品の種類と量(使用基準)
- 製造や販売に関する安全性・品質の基準
つまり、どんな食品添加物を、どんな食品に、どれだけ使っていいかは、すべて国によって定められており、認可されたものしか使用できない仕組みになっています。
「食品添加物は、作る側の都合で使われている」と感じる方もいるかもしれませんが、実際に認められている添加物は、私たち消費者にとって明確なメリットがあるものだけです。
そのメリットの具体例は以下の通り。
- 食品の腐敗を防ぎ、食中毒のリスクを下げる(保存料など)
- 栄養価を保ち、しっかり栄養がとれる状態を維持する(酸化防止剤など)
- 見た目や香りを整え、食欲を高める(着色料・香料など)
こうした添加物は、私たちの食生活を安全・快適に保つために欠かせない役割を担っています。
さらに、使用された食品添加物については、食品表示法により、食品のパッケージや容器に原則すべて表示することが義務付けられています。
このように、食品添加物は種類や使用量だけでなく、使い方や表示方法にいたるまで、法律に基づいて細かくルールが定められ、しっかりと管理されています。
「なんとなく不安」と感じてしまいがちですが、実際には私たちの安全を守るために、非常に慎重に扱われているのです。
長期的な影響も調べられている
食品添加物の安全性は、一生涯にわたって摂取しても健康に悪影響を及ぼさないことが、科学的に確認されたものだけが使用を認められています。
その評価には、妊娠中の胎児への影響や、二世代にわたる長期的な影響なども含まれています。短期的な毒性だけでなく、発がん性やアレルギーなどのリスクについても事前に詳しく調査されているのです。
そのため、根拠のない「食品添加物は体に悪い」というイメージを持つのは、正しい理解とは言えません。
そもそも食品添加物の役割とは?使われる目的


そもそも、なぜ食品添加物は使用されるのでしょうか?
食品添加物の使用目的は以下の通りです。
- 食品の製造・加工に必要だから
- 保存性の向上や食中毒の予防
- 嗜好性および品質の向上
- 栄養価の補充・強化
食品の製造・加工に必要だから
食品添加物は、食品の製造や加工に欠かせない場合もあります。
実際、豆腐や中華麺などは、食品添加物を使わなければ作ることができません。
たとえば豆腐は、豆乳を豆腐用凝固剤で固めてつくられます。この凝固剤は食品添加物であり、豆腐づくりには欠かせない存在です。意外に思われるかもしれませんが、私たちの身近な食品にも食品添加物が重要な役割を果たしているのです。
また、中華麺も同様で、小麦粉にかんすい(アルカリ塩水溶液)という食品添加物を加えてつくられます。かんすいがあることで、あの独特のコシや風味、黄色みのある中華麺になります。かんすいなしでは、中華麺本来の特徴を出すことはできません。
保存性の向上や食中毒の予防
食品添加物は、食品の腐敗を防ぎ、食中毒を予防するうえで重要な役割を担っています。
そもそも、多くの食品は日持ちせず、時間が経つとすぐに腐ってしまうことがよくあります。
しかし、私たちが普段口にする加工食品は、長期間保存でき、好きなときに安全に食べられるものが多いですよね。これは、保存料をはじめとした食品添加物のおかげです。
保存料は、食品中の微生物の発育を抑えることで、保存性を高め、腐敗や食中毒のリスクを減らしています。そのため、無添加の食品は保存性が低く、実は傷みやすいというデメリットもあります。
たとえば、「健康のために無添加を選んでいるつもり」でも、保存状態が悪ければすぐにカビが生え、中には強い発がん性を持つカビ毒が発生することもあります。こうなると、かえって健康を損ねるリスクにもつながりかねません。
このように、食品添加物は、私たちが食品を安全・便利に利用するために欠かせない存在なのです。
嗜好性および品質の向上
食品添加物は、食品の安全性だけでなく、私たちが「おいしく、楽しく」食べるための工夫にも大きな役割を果たしています。
たとえば、着色料は見た目を美しく整えるために使われることが多く、「色」が食欲に与える影響は決して小さくありません。
- バターの淡い黄色
- たらこの鮮やかな赤
- ソーダ飲料の透き通った青
- サクランボの可愛らしいピンク
- 和菓子の繊細な色合い
- お祝いごとの紅白まんじゅう など
これらの色は、食品添加物によって本来のイメージ通りの見た目に調整され、視覚的なおいしさを引き立てているのです。味がどれだけ良くても、見た目が悪いと食欲がわかない…そんな経験、誰しもあるのではないでしょうか。
また、食品添加物には、魚介類などの生臭さを抑えたり、酸味や苦味などの味のアクセントを加える働きもあります。風味を整えることで、よりおいしく食べられるよう工夫されています。
このように、食品添加物は「見た目」や「味」に関する品質向上にも深く関わっており、私たちの食生活を豊かにするために役立っているのです。
栄養価の補充・強化
食品添加物は、安全性や味の調整だけでなく、不足しがちな栄養素を補う目的でも使用されています。
もちろん、栄養はできるだけ通常の食事からバランスよく摂ることが理想です。しかし、体調・年齢・生活環境などによって、それが難しい場合もあります。
そうしたケースでは、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養成分を「栄養強化剤」として食品に加えることで、効率的かつ経済的に栄養価を高めることができます。
もし食品添加物がなかったら?私たちの食生活への影響


私たちの身の回りには、さまざまな食品添加物が使われています。保存料や着色料、甘味料、酸化防止剤、栄養強化剤など、その目的は多岐にわたります。
以下のような影響が考えられます。
- 食中毒のリスクが高まる
- 見た目・味の魅力が減る
- 栄養補助が難しくなる
食中毒のリスクが高まる
まず最も大きな影響は、食品の保存性が著しく低下することです。保存料がなければ、加工食品はすぐに腐敗してしまい、食中毒のリスクが高まります。
また、食品を遠方まで流通させたり、まとめ買いして保存しておくことも難しくなり、食の便利さが大きく損なわれます。
食品添加物は、腐敗を防ぐことで、食品ロスの削減にもつながっています。
見た目・味の魅力が減る
見た目や味の面でも影響があります。着色料や香料がなければ、食品の見た目がくすんだり、風味が落ちたりして、私たちが「おいしそう」と感じる要素が減ってしまいます。
特に和菓子や菓子パンなど、見た目も楽しむ食品ではその影響が大きいでしょう。
栄養補助が難しくなる
栄養強化の観点でも課題が出てきます。ビタミンやミネラルなどを添加して栄養価を補っている食品がなくなると、特定の栄養素を効率よく摂取することが難しくなるかもしれません。
栄養強化食品や特定保健用食品(トクホ)などの商品もなくなります。
このように、食品添加物は「不自然なもの」ではなく、現代の多様で安全な食生活を支える重要な存在なのです。もし食品添加物がなければ、私たちは不便で不安定な食環境に逆戻りするかもしれません。
なぜ食品添加物は悪者にされるのか?


食品添加物は、本来、安全かつ必要な目的で使われているものです。それでも「食品添加物=体に悪い」というイメージを持っている人は少なくありません。
大きな要因の一つが、報道やSNSでの情報の伝わり方にあります。
たとえば、ある食品添加物に「発がん性の可能性がある」と指摘された場合、それが事実かどうかに関係なく、大きく報道されることがあります。しかし、後に「発がん性は確認されなかった」と判明しても、その情報は報道されないことが多くあります。その結果、私たちの記憶には「その添加物=発がん性がある」という印象だけが残ってしまうことがあるのです。
また、SNSやネット上では、不安をあおるようなタイトルや表現が使われた情報が注目を集めやすく、拡散されやすい傾向があります。中には、事実と異なる内容や、極端な意見も少なくありません。
さらに、専門家や公的機関の冷静な見解よりも、インフルエンサーや有名人の一言のほうが、多くの人に強く印象づけられるという現代の情報環境も、誤解を広げる一因となっています。
話題になっている情報が本当に正しいのか、冷静に考える姿勢が、過剰な不安や誤解から自分を守ることにつながります。
食品添加物を「避ける」よりも大切なこととは


食品添加物は、安全性がしっかりと管理されたうえで使用されています。そのため、管理栄養士としては、「食品添加物を避けること」よりも、
というのも、栄養バランスの乱れや塩分の摂りすぎは、肥満や高血圧といった生活習慣病のリスクを高めることが、明確にわかっているからです。
それにもかかわらず、意外と多くの人が、食品添加物の有無には敏感でも、食生活の基本的な部分にはあまり関心を持っていないように感じます。
しかし、健康は「毎日の積み重ね」でつくられるもの。食生活の基本がしっかりしていないのに、添加物ばかりを気にしているのは、本質よりも細かいことにばかり目を向けてしまっている状態かもしれません。
生活習慣病のリスクを確実に下げるためにも、まずは食生活の基本を整えることを優先しましょう。
バランスの良い食事とは?


バランスの良い食事とは、主食・主菜・副菜がきちんとそろった食事のことを指します。
- 主食:ご飯、パン、麺など
- 主菜:肉、魚、卵、大豆製品など
- 副菜:野菜、いも類、海藻、きのこなど
毎食、これらがそろっていることを意識するだけでも、栄養バランスはぐっと良くなります。
塩分の摂取量にも注意を


塩分の摂りすぎも、特に気をつけたいポイントです。
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、1日の塩分摂取量は以下が目標になっています。
- 成人男性:7.5g未満
- 成人女性:6.5g未満
しかし、令和5年の国民健康・栄養調査によると、日本人の1日あたりの平均塩分摂取量は約10gと、目標値を大きく上回っているのが現状です。
特に日本食は、しょうゆや味噌など塩分の多い調味料を使うことが多く、気づかないうちに摂りすぎているケースもあります。塩分の過剰摂取は、高血圧だけでなく、心臓や腎臓などの臓器にも負担をかけてしまいます。
健康を守るためにも、適切な量を意識することが大切です。
まとめ|情報に振り回されず、賢く食品を選ぶために


この記事では、食品添加物は本当に体に悪いのか?について、管理栄養士の視点から解説しました。
要点をまとめると以下の通り。
- 食品添加物は国が安全性を評価している
- 科学的根拠に基づき種類や量が管理されている
- 「添加物=体に悪い」というイメージは誤解が多い
- 無添加=安全とは限らない
- 添加物の役割は腐敗防止・品質の向上・栄養強化など、重要な役割がある
- 添加物よりもまず、食生活の基本(栄養バランスや塩分量など)を整えることが大切
食品添加物というと、「体に悪いから避けたい」と思われる方も多いかもしれませんが、実際には、安全性がしっかりと管理されており、私たちの食生活を支える存在でもあります。
もちろん、過剰な摂取は望ましくありませんが、必要以上に怖がったり、すべてを避けようとしたりする必要はありません。
大切なのは、不安に振り回されずに正しい情報を知り、自分にとって適切な選択ができるようになることです。



食品添加物と上手に付き合いながら、日々の食生活をより安心で健康的なものにしていきましょう。
なお、この記事は、以下の書籍を参考にしています。
▼日本栄養士会推奨の信頼できる書籍です。食品添加物についての理解を深めるのにふさわしい一冊です。
▼こちらは、日本栄養士会雑誌で紹介されていた書籍です。食品添加物に限らず、食品の安全性について幅広く解説されています。



食品添加物の理解を深めたい方はぜひ一度読んでみることをおすすめします。








