- ナッツって本当に体に良いの?
- どんな栄養が含まれているの?
- 毎日食べても大丈夫?
こういった疑問をお持ちではありませんか?
「ナッツやごまは健康に良い」と聞いたことがある人は多いと思います。
しかし、ナッツは食べ過ぎると、カロリーオーバーになりやすい食品でもあります。
そこでこの記事では、管理栄養士の視点から、ナッツやごまに含まれる栄養と効果的な摂り方をわかりやすく解説します。

管理栄養士 まこ
- 30代の管理栄養士
- 急性期病院3年・給食委託会社8年
- 2つの病院とクリニックで栄養指導経験
- 1日平均4万食提供の委託給食の献立作成を担当
- 関西・関東の病院を中心とした給食提供実績
ナッツが好きな方も、これから取り入れたい方も、ぜひ最後までご覧ください。
ナッツとごまの栄養と健康効果とは?

ナッツやごまは、「種実類(しゅじつるい)」という食材のグループに分類されます。
種実は糖質の多い栗や銀杏と、脂質が多いナッツやごまがあります。
ナッツやごまには、食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富に含まれており、健康維持に役立ちます。ナッツは脂質が多いイメージがありますが、多くは体に良い脂質です。
種実の注目したい栄養素は以下の通り。
- 不飽和脂肪酸
- ビタミンE
- 食物繊維
- 鉄
- 亜鉛
- カルシウム
不飽和脂肪酸
種実類には、不飽和脂肪酸が多く含まれているものがあります。
不飽和脂肪酸は、脂質の一種で、体にとって良い働きをする「良質な脂」です。
種実類に含まれている不飽和脂肪酸は▼以下の通り。
血中の悪玉コレステロール(LDL)を減らす働きがあり。アーモンドやヘーゼルナッツに多い。
一価不飽和脂肪酸(オレイン酸):血流改善や抗炎症作用が期待される。くるみやごまに豊富。
多価不飽和脂肪酸(リノール酸・α-リノレン酸など):不飽和脂肪酸は、心血管疾患の予防や生活習慣病対策に役立つとされています。意識的に取り入れたい栄養素のひとつです。

ただし、脂質であることに変わりはないため、摂りすぎには注意。
ビタミンE
種実類には、ビタミンEが多く含まれているものがあります。
ビタミンEは、脂溶性のビタミンで、体の中で「抗酸化作用」を持つ栄養素です。細胞の老化の原因のひとつ「活性酸素」の働きを抑えます。
ビタミンEは脂質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。脂質を多く含むナッツはビタミンEを効率的に摂取できる食品です。
アーモンドやヘーゼルナッツなどに、特に多く含まれています。



ビタミンEを摂ることで、老化の予防に役立ちます。
食物繊維
種実類には、食物繊維が多く含まれているものがあります。
食物繊維は「第6の栄養素」とも呼ばれ、以下のような健康効果があります。
- 腸内環境を整える
- 血糖値の急上昇を防ぐ
- コレステロール値を下げる
食物繊維は大きく2種類に分けられます。
糖の吸収をゆるやかにする、コレステロールの排出を助ける働きがあります。
水溶性食物繊維:腸内でゲル状になり、腸を刺激して便通を促進し、老廃物の排出をサポートします。
不溶性食物繊維:種実類には、不溶性食物繊維が多く含まれています。



ナッツを取ることで便秘予防に繋がります!
鉄
種実類には、鉄分が含まれているものがあります。
鉄は、赤血球をつくるために必要な栄養素です。特に女性は、月経や妊娠による影響で鉄が不足しやすいため、意識して摂取することがすすめられます。
種実に含まれる鉄は「非ヘム鉄」と呼ばれる植物性です。動物性食品の「ヘム鉄」と比べると吸収率がやや低いのが特徴です。
ビタミンCやたんぱく質と一緒に摂ることで吸収率を高めることができます。



鶏肉にごまをまぶして焼く「鶏肉の南部焼き」などもおすすめ!
亜鉛
亜鉛は、体のさまざまな働きをサポートする重要なミネラルです。
以下のような働きがあります。
- 免疫機能の維持
- 傷の治癒
- 味覚や嗅覚の正常化
- 肌や髪の健康など
細胞の新陳代謝やホルモンの生成にも関わっており、健康な体づくりに欠かせません。
不足すると、免疫力の低下、味覚障害、肌荒れ、脱毛、集中力の低下などの不調が現れることがあります。特に成長期の子どもや妊娠中の方、ストレスが多い人、加工食品中心の食生活をしている人は不足しやすいといわれています。



ごまやカシューナッツなどに亜鉛が多く含まれています。
カルシウム
種実類には、カルシウムも豊富に含まれているものがあります。
カルシウムは、骨や歯の健康を保つために欠かせない栄養素です。骨粗しょう症の予防にも効果があるとされています。
なかでも、ごまは種実類の中でカルシウム含有量がトップクラス。料理に取り入れやすく、見た目のアクセントにもなるため、活用しやすい食材です。



一度にたくさん摂るのは難しいですが「ふりかける」「和える」など、少量ずつこまめに取り入れるのがおすすめ。
ナッツとごまそれぞれの栄養価


種実類には多くの種類があります。主なものは次の通り。
- アーモンド
- カシューナッツ
- ぎんなん
- くり
- くるみ
- ごま
- ピスタチオ
- マカダミアナッツ
- 落花生※
※落花生は豆類に分類されますが、ここでは栄養価が近い種実類と一緒に解説します。
それぞれの栄養価の違いは次の通り。
アーモンド いり | カシューナッツ 味付 | 銀杏 茹 | 栗 茹 | くるみ いり | |
エネルギー(kcal) | 608 | 591 | 169 | 152 | 713 |
たんぱく質(g) | 19.0 | 19.3 | 4.0 | 2.9 | 13.4 |
脂質(g) | 54.2 | 47.9 | 1.2 | 0.5 | 70.5 |
炭水化物(g) | 5.6 | 17.2 | 34.3 | 30.0 | 2.6 |
食物繊維(g)※ | 11.0 | 6.7 | 2.4 | 6.6 | 7.5 |
カルシウム(mg) | 260 | 38 | 5 | 23 | 85 |
鉄(g) | 3.7 | 4.8 | 1.2 | 0.7 | 2.6 |
亜鉛(mg) | 3.7 | 5.4 | 0.4 | 06 | 2.6 |
ビタミンE(mg) | 29.0 | 0.6 | 1.6 | 0 | 1.2 |
塩分(g) | 0 | 0.6 | 0 | 0 | 0 |
ごま いり | ピスタチオ 味付 | マカダミアナッツ 味付 | 落花生 いり | |
エネルギー(kcal) | 605 | 617 | 751 | 607 |
たんぱく質(g) | 19.6 | 16.2 | 7.7 | 25.0 |
脂質(g) | 51.6 | 55.9 | 76.6 | 50.3 |
炭水化物(g) | 9.3 | 7.7 | 4.5 | 10.0 |
食物繊維(g)※ | 12.6 | 9.2 | 6.2 | 7.2 |
カルシウム(mg) | 1200 | 120 | 47 | 50 |
鉄(g) | 9.9 | 3.0 | 1.3 | 1.7 |
亜鉛(mg) | 5.9 | 2.5 | 0.7 | 3.0 |
ビタミンE(mg) | 0.1 | 1.4 | 微量 | 11.0 |
塩分(g) | 0 | 0.7 | 0.5 | 0 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
種実類の栄養価は種類によって大きく異なります。
銀杏や栗は脂質が比較的控えめで、炭水化物が中心です。
一方で、アーモンドやくるみ、カシューナッツ、マカダミアナッツなどのナッツ類は脂質を多く含んでおり、カロリーも高め。ただしこれらの脂質は、健康維持に役立つとされています。
中でもアーモンドは、たんぱく質・食物繊維・カルシウム・鉄・ビタミンEのすべてを高水準で含んでおり、栄養価が高い食材です。特にビタミンEの含有量は際立っており、抗酸化作用が期待できます。
ごまは100gあたりのカルシウム量が1200mgと、実は同量の牛乳10倍以上の含有量です。さらに、鉄・亜鉛・食物繊維といった栄養素も多く、少量でも効率よく栄養を補える食材。料理に積極的に使っていきたいですね。
落花生は、ビタミンEの含有量がアーモンドに次いで高く、たんぱく質も豊富。



それぞれの種実の特徴を知り、上手に取り入れていくことがおすすめ。
ナッツの適量はどれくらい?食べ過ぎに注意


ナッツは栄養価が高く、間食としても優れた食品ですが、高カロリーな点には注意が必要です。
これは、農林水産省の「食事バランスガイド」で推奨されている間食の適正カロリー(1日あたり200kcal)を参考にした量です。
この範囲内であれば、ナッツの栄養を上手に取り入れることができ、健康的な間食として活用できます。
ナッツには、良質な脂質やたんぱく質、ビタミン・ミネラルが豊富ですが、摂り過ぎるとカロリーオーバーにつながりやすいです。
「食べ過ぎない」ことが健康的に取り入れるためのポイント。



中でもマカダミアナッツはカロリーが高いので25g程度が適量です。
ナッツの効果的な食べ方


ナッツは健康的な食生活に役立つ優れた食材です。ここでは、より効果的にナッツを摂るためのポイントをご紹介します。
無塩・素焼きを選ぶ
ナッツには「味付きタイプ」と「素焼きタイプ」がありますが、無塩・素焼きタイプを選びましょう。味付きのナッツはおいしい反面、塩分が多くなりがちです。
たとえばアーモンドでは、無塩タイプは塩分0gですが、味付きタイプは100gあたり0.3gの塩分が含まれています。一見少ないように感じますが、積み重ねで塩分過多になりやすく、日本人の塩分摂取過多の問題にもつながります*1。
無塩ナッツは、香ばしく自然な風味があり、食べ慣れるとクセになるおいしさです。健康のためにも、無塩タイプを選びましょう。
個包装タイプのもので食べ過ぎ防止
ナッツを食べ過ぎないために便利なのが個包装タイプのナッツ。
あらかじめ適量が分けられているため、1日の摂取量(目安は30g程度)を守りやすく、食べ過ぎ防止に効果的です。
食前・間食に少量食べる
ナッツは食前や間食に少しだけ食べるのが効果的です。
食物繊維や脂質により、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。また、満腹感が得られやすく、食事量のコントロールにも役立ちます。
お菓子代わりにナッツを選べば、エネルギー源として優れているうえに、食物繊維やビタミン・ミネラルも補えます。
料理に使うのもおすすめ
ナッツはそのまま食べるだけでなく、料理に取り入れるのもおすすめです。
たとえば、以下のような料理があります。
- カシューナッツを使った「鶏肉と野菜の炒め物」
- ピーナッツ衣をつけた「鶏肉のピーナッツ焼き」
- マッシュしたかぼちゃにくるみを加える
- アーモンドスライスをサラダにトッピング
ナッツを加えると、食感と風味がプラスされて、満足感のある一品になります。
ナッツやごまに含まれる鉄分は、たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が高まります。料理に取り入れると、効率よく鉄分を補えます。



料理に使えば、ナッツの使用量が調整しやすいのも利点です。
すりごま・刻みナッツで吸収率アップ
ナッツやごまは、刻んだりすりつぶしたりすることで栄養の吸収率がアップします。
そのままでは、皮や殻が消化されにくく、栄養素が体に吸収されにくいのです。
料理に応じてごまをすったり、普段いりごまのところをすりごまを買うなどもおすすめ。



ひと工夫で効率よく栄養を摂取できるので、ぜひ取り入れてみてください。
まとめ:ナッツとごまを味方にして、健康的な食生活を


この記事ではナッツとごまの健康効果と摂り方について解説しました。
要点をまとめると以下の通り。
- ナッツやごまには、生活習慣病の予防に役立つ栄養素が豊富
- 脂質やカロリーも高いため、食べ過ぎには注意が必要
- 種類によって栄養価に違いがある
- 1日の目安量は約30g
- 間食や料理に取り入れるのが効果的な摂り方
ナッツやごまをうまく取り入れることで、日々の食事に健康的な栄養をプラスできます。
特に、アーモンドやごまは栄養価が高くておすすめです。
ただし、摂り過ぎるとカロリーオーバーになる可能性もあるため、適量を守って楽しみましょう。
ぜひ、毎日の食事にナッツやごまを取り入れてみてください。



私も家では何にでもごまをトッピングしています。

