- きのこにはどんな栄養があるの?
- ダイエットに効果があるって本当?
- きのこを上手に摂る方法を知りたい!
こんな疑問をお持ちではありませんか?
きのこは、健康維持に役立つ栄養素が豊富なうえ、うま味成分も含む食材です。さまざまな料理に合い、自然なうま味を引き立てます。しかも低カロリーでヘルシーです。
そこでこの記事では、管理栄養士の視点から、きのこの栄養や健康効果、効果的な摂り方について分かりやすく解説します。

管理栄養士 まこ
- 30代の管理栄養士
- 急性期病院3年・給食委託会社8年
- 2つの病院とクリニックで栄養指導経験
- 1日平均4万食提供の委託給食の献立作成を担当
- 関西・関東の病院を中心とした給食提供実績
きのこを上手に食生活に取り入れたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
きのこの主な栄養素と健康効果

きのこは水分を多く含むため、エネルギー源としてはそれほど期待できません。
しかし、食物繊維やビタミン類、香り成分、うま味成分など、うれしい成分がたくさん含まれています。
中でも、注目したい特徴は以下の5つです。
- 食物繊維
- ビタミンD
- ビタミンB群
- カリウム
- 低カロリー
食物繊維
きのこには、食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は「第6の栄養素」とも呼ばれ、以下のようなさまざまな健康効果があります。
- 腸内環境を整える
- 血糖値の急上昇を防ぐ
- コレステロール値を下げる
食物繊維は大きく2種類に分けられます。
糖の吸収をゆるやかにするほか、コレステロールの排出を助ける働きがあります。
水溶性食物繊維:腸内でゲル状になり、腸を刺激して便通を促進し、老廃物の排出をサポートします。
不溶性食物繊維:きのこには、水溶性・不溶性の両方の食物繊維が含まれていますが、特に不溶性食物繊維の割合が多いのが特徴です。
なかでも注目したいのが、きのこに含まれる水溶性食物繊維「β-グルカン」です。β-グルカンには、免疫細胞を活性化させる働きがあり、免疫力の向上や抗がん作用などが期待されています*1。
ビタミンD
きのこには、ビタミンDが多く含まれています。ビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける働きがあり、骨や歯の健康を維持するために欠かせない栄養素です。
特に、骨粗しょう症の予防に効果的で、成長期の子どもから高齢者まで、幅広い年代で意識して摂りたいビタミンです。
また、ビタミンDは紫外線を浴びることで体内でも合成されるビタミンですが、現代人は日照不足や日焼け対策により、不足しやすい傾向にあります。
その点、きのこは数少ない植物性食品の中でビタミンDを含む貴重な存在です。

天日干ししたきのこは、日光によりビタミンDが増加しています。
ビタミンB群
きのこには、ビタミンB群も含まれています。
ビタミンB群は、エネルギー代謝を助ける働きがあり、体内で炭水化物・脂質・たんぱく質を効率よくエネルギーに変えるために欠かせない栄養素です。
主に含まれているのは以下のようなビタミンです。
- ビタミンB1:糖質をエネルギーに変える。疲労回復にも関与
- ビタミンB2:脂質・糖質・たんぱく質の代謝を助ける。皮膚や粘膜の健康維持
- ナイアシン:代謝全体をサポートし、血行促進や肌の調子を整える
ビタミンB群は水溶性のため、体に蓄積されにくく、不足しやすい栄養素でもあります。そのため、日々の食事で継続的に摂ることが大切です。



きのこを食事に取り入れることで、効率的にビタミンB群を補えます。
カリウム
きのこには、カリウムも多く含まれています。
カリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあり、高血圧の予防やむくみの改善に効果的なミネラルです。
現代の食生活では塩分摂取が多くなりがちなので、カリウムをしっかり摂ることが推奨されています。
きのこは、低カロリーでカリウムがしっかり摂れる食材として非常に優秀です。



特にダイエット中や、塩分を控えたい方にとって、きのこは日常的に取り入れたい食材のひとつです。
低カロリー
きのこは、とても低カロリーな食材です。
種類にもよりますが、一般的なきのこは、100gあたり約20~30kcal前後です。エネルギーが少なく、ダイエット中でも安心して食べられます。
食物繊維やうま味成分が豊富に含まれているため、満足感のある料理に仕上がりやすく、食べ過ぎ防止にもなります。さらに、炒め物・スープ・煮物などどんな料理にも使いやすく、カサ増し食材としても重宝します。



「ボリュームは欲しいけど、カロリーは抑えたい」という場面に、きのこはぴったりです。
きのこの種類と栄養の違い


きのこにはさまざまな種類があり、それぞれに含まれる栄養素や特長が異なります。ここでは、身近なきのこについて、栄養価の違いを紹介します。
代表的なきのこには、以下のような種類があります。
- えのきたけ
- きくらげ
- しいたけ
- しめじ
- なめこ
- エリンギ
- まいたけ
- マッシュルーム
- まつたけ
栄養価の違いは以下の通り。
100g当たり | えのきたけ | しいたけ | しめじ | なめこ |
エネルギー(kcal) | 34 | 25 | 26 | 21 |
たんぱく質(g) | 1.6 | 2.0 | 1.6 | 1.0 |
脂質(g) | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.1 |
炭水化物(g) | 4.8 | 0.7 | 2.5 | 2.4 |
食物繊維(g)※ | 3.9 | 4.6 | 3.5 | 3.4 |
カリウム(mg) | 340 | 290 | 370 | 240 |
ビタミンD(µg) | 0.9 | 0.3 | 0.5 | 0 |
ビタミンB1(mg) | 0.24 | 0.13 | 0.15 | 0.07 |
ビタミンB2(mg) | 0.17 | 0.21 | 0.17 | 0.12 |
ナイアシン当量(mg) | 7.4 | 4.0 | 6.4 | 5.5 |
塩分(g) | 0 | 0 | 0 | 0 |
100g当たり | エリンギ | まいたけ | マッシュルーム | まつたけ |
エネルギー(kcal) | 31 | 22 | 15 | 32 |
たんぱく質(g) | 1.7 | 1.2 | 1.7 | 1.2 |
脂質(g) | 0.2 | 0.3 | 0.1 | 0.2 |
炭水化物(g) | 3.7 | 1.8 | 0.2 | 3.4 |
食物繊維(g)※ | 3.4 | 3.5 | 2.0 | 4.7 |
カリウム(mg) | 340 | 230 | 350 | 410 |
ビタミンD(µg) | 1.2 | 4.9 | 0.3 | 0.6 |
ビタミンB1(mg) | 0.11 | 0.09 | 0.06 | 0.10 |
ビタミンB2(mg) | 0.22 | 0.19 | 0.29 | 0.10 |
ナイアシン当量(mg) | 6.7 | 5.4 | 3.6 | 8.3 |
塩分(g) | 0 | 0 | 0 | 0 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
種類による栄養価の差はそれほど大きくありませんが、中でもえのきたけは食物繊維、ビタミンB1、ナイアシンが特に豊富です。
また、まいたけはビタミンDの含有量が際立って多く、栄養価の高いきのこのひとつといえます。
干しきのこと生の違いは?
きのこは「生」と「干し」の2つの形で流通していますが、栄養価や風味に違いがあります。
干しきのこの特徴は以下の通り。
- うま味成分(グアニル酸)が凝縮されている
- 日光で干すとビタミンD量が大幅に増加
たとえば、しいたけの「生」と「干し」の栄養価を比べると以下の通り。
100g当たり | 生 椎茸 | 乾 椎茸 |
エネルギー(kcal) | 25 | 258 |
たんぱく質(g) | 2.0 | 14.1 |
脂質(g) | 0.2 | 1.7 |
炭水化物(g) | 0.7 | 22.1 |
食物繊維(g)※ | 4.6 | 46.7 |
カリウム(mg) | 290 | 2200 |
ビタミンD(µg) | 0.3 | 17.0 |
ビタミンB1(mg) | 0.13 | 0.48 |
ビタミンB2(mg) | 0.21 | 1.74 |
ナイアシン当量(mg) | 4.0 | 23.0 |
塩分(g) | 0 | 0 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
生と乾燥の栄養価を比べると、ビタミンDが大幅に増加しているのが分かります。
エネルギー:生 25kcal → 乾燥 258kcal(約10倍)
約56倍)
ビタミンD:生 0.3µg → 乾燥 17.0µg(乾燥によって水分が抜けるため、エネルギーなどの栄養素が濃縮されるのは当然ですが、それ以上にビタミンDが圧倒的に増加しています。これは、乾燥の過程、特に天日干しによってビタミンDが生成・増加するためです。



干しきのこはビタミンDを効率よく摂取できる食材といえます。
干しきのこの種類と栄養価の違い
干しきのこは以下のような種類があります。
- きくらげ
- しいたけ
- まいたけ
栄養価の違いは以下の通り。
きくらげ 乾 | しいたけ 乾 | まいたけ 乾 | |
エネルギー(kcal) | 216 | 258 | 273 |
たんぱく質(g) | 5.3 | 14.1 | 12.8 |
脂質(g) | 1.3 | 1.7 | 2.4 |
炭水化物(g) | 17.1 | 22.1 | 29.5 |
食物繊維(g)※ | 57.4 | 46.7 | 40.9 |
カリウム(mg) | 1000 | 2200 | 2500 |
ビタミンD(µg) | 85.0 | 17.0 | 20.0 |
ビタミンB1(mg) | 0.19 | 0.48 | 1.24 |
ビタミンB2(mg) | 0.87 | 1.74 | 1.92 |
ナイアシン当量(mg) | 5.5 | 23.0 | 69.0 |
塩分(g) | 0.1 | 0 | 0 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
きくらげは、ビタミンDが他の干しきのこの4倍多く含まれています。
まいたけは、ビタミンB群やナイアシンが多く含まれています。



料理の種類や栄養の目的に応じて、生と干しを上手に使い分けるといいでしょう。
きのこは1日どれくらい食べる?


きのこを食べるうえで、「1日にどれくらいの量を食べればいいの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。
実は、きのこには明確な1日の推奨摂取量は定められていません。
「意外と少ない」と感じるかもしれません。ほんの少し意識するだけで、毎日の食事に無理なく取り入れられる量です。
きのこは一度にたくさん食べるというより、炒め物やスープ、みそ汁など日々の料理に少しずつ加えていくのが、上手に摂るコツです。



干しきのこなどを上手に取り入れていきましょう。
きのこを食べるときの注意点とポイント


きのこを上手に食べるためのポイントがいくつかあります。
栄養を逃さず食べるためにも、以下のポイントに注目してみましょう。
- きのこは水で洗わない
- 加熱は強火で一気に
- 冷凍すると栄養価アップ
- 干しきのこを上手に取り入れる
きのこは水で洗わない
きのこを調理する際は、水で洗わないようにするのがポイントです。きのこには水に溶けやすいビタミン(ビタミンB群など)が含まれており、水洗いするとこれらの栄養素が流れ出てしまう可能性があります。
また、きのこの香り成分も水に弱く、洗うことで風味が損なわれることも。
意外と知らずに水で洗ってしまっている人も多いかもしれません。



せっかくの栄養と香りを逃さないためにも、正しい扱い方を心がけましょう。
加熱は強火で一気に
きのこを調理するときは、強火で一気に加熱するのがポイントです。
きのこは水分を多く含んでいるため、弱火でじっくり加熱すると水分がどんどん出てしまい、料理全体が水っぽくなってしまうことがあります。
強火で手早く調理することで水分の出過ぎを防ぎ、きのこのうま味をしっかり閉じ込めることができます。



炒め物やグリルなどでは、強火だと香ばしさが引き立ち、よりおいしく仕上がります。
冷凍すると栄養価アップ
きのこは冷凍して使うのもおすすめの方法です。冷凍することで細胞膜が壊れ、加熱したときに酵素の働きによってうま味成分が引き出され、風味がより豊かになるといわれています。
使うときは解凍せずにそのまま調理するのがポイント。
炒め物やスープ、煮物など、さまざまな料理に手軽に活用できます。
干しきのこを上手に取り入れる
きのこは生でもおいしくいただけますが、干しきのこを活用するのもおすすめです。
干しきのこは常温で保存ができるため、使いたいときにすぐ使えるのが魅力。日持ちもするので、ストックしておくととても便利です。
干すことで栄養価が高まり、特にビタミンDの含有量は生のきのこよりも多くなっています。
戻した際に出る戻し汁には旨みがたっぷり含まれているため、スープや煮物などに使えば、料理全体の風味が引き立ちます。
まとめ:きのこを積極的に取り入れよう


この記事では、きのこの栄養や健康効果について解説しました。
要点をまとめると、以下の通りです。
- きのこは低カロリーで食物繊維やビタミンが豊富
- 干しきのこにはビタミンDが多く含まれている
- 冷凍保存でうま味や栄養価がアップする
きのこは、現代人に多い生活習慣病の予防にも役立つ、ヘルシーで栄養価の高い食材です。
干しきのこを常備すれば、必要なときにすぐ使えるため、毎日の食事に取り入れやすくなります。
手軽に栄養をプラスできる万能食材です。



ぜひ、日々の食事にきのこを取り入れて、健康的な食生活を目指しましょう。


参考文献(2025年5月23日参照)
*1:和田淑子・大越ひろ 編著. (2008). 健康・調理の科学〔第3版〕-おいしさから健康へー (第3刷). 株式会社建帛社.
栄養価は、すべて日本食品標準成分表2020年版(八訂)より引用しています。