- 炭水化物ってなに?糖質と同じ?
- 食べると太るの?
- どんな食べ物に多く含まれているの?
そんな疑問をお持ちではありませんか?
「炭水化物を食べると太る」と思っていませんか?炭水化物の本当の働きや、糖質との違いを正しく理解している人は意外と少ないです。
ネット上には、炭水化物に関する誤った情報や極端な意見も多く出回っています。
その情報をうのみにすると、偏った食生活や健康リスクにつながる可能性もあります。
そこでこの記事では、管理栄養士の視点から、炭水化物の基礎知識や糖質との違い、多く含まれる食べ物まで、わかりやすく解説します。

管理栄養士 まこ
- 30代の管理栄養士
- 急性期病院3年・給食委託会社8年
- 2つの病院とクリニックで栄養指導経験
- 1日平均4万食提供の委託給食の献立作成を担当
- 関西・関東の病院を中心とした給食提供実績
「炭水化物=悪」と思っていた方こそ、ぜひ最後までご覧ください。
炭水化物とは、三大栄養素のひとつ

炭水化物とは、私たちの体に重要な三大栄養素のひとつです*1。主にエネルギー源として使われます。
炭水化物はご飯やパン、麺類などの主食に多く含まれているほか、野菜や果物などにも含まれています。
体内に取り込まれると、炭水化物は消化されて最小単位のブドウ糖になります。ブドウ糖は、細胞のエネルギー源として利用されます。
特に以下のような体の部位は、ブドウ糖しかエネルギーとして利用できません。
- 脳
- 神経組織
- 赤血球
- 腎尿細管
- 精巣
- 酸素不足の骨格筋など
炭水化物はこれらの組織にエネルギーを供給する重要な役割をになってるのです。
炭水化物が不足すると、疲れやすさや集中力の低下の原因になります。

炭水化物は脳の栄養源なのでとても重要!
炭水化物と糖質の違いとは?


「炭水化物=糖質」と思われがちですが、実は糖質は炭水化物の一部です。
炭水化物は、「糖質」と「食物繊維」を合わせた総称です。
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
糖質:体内で消化・吸収されてエネルギー源になる
食物繊維:体内で消化されにくくエネルギー源になりにくい
食物繊維はほとんど消化されず、以下のような働きがあります。
- 腸内環境を整える
- 血糖値の上昇を緩やかにする
そのため、同じ「炭水化物」でも、糖質と食物繊維の割合で体への影響が異なります。
糖質が多い食品はエネルギー源になりやすく、食物繊維が多い食品は健康的、生活習慣病予防になります。



炭水化物、糖質、食物繊維の違いはよく理解しておきましょう!
糖質は、1g当たり約4kcalのエネルギーを産生します。
炭水化物は「質」が大事


炭水化物は、私たちの体にとって欠かせないエネルギー源です。しかし、ただ炭水化物を摂れば良いというわけではありません。重要なのは「炭水化物の質」です*2。
たとえば、砂糖はほぼ100%が糖質です。エネルギーにはなりますが、ビタミンやミネラルはほとんど含まれていません。つまり砂糖は、栄養価が低く炭水化物の質が良くないと言えます。
この他にも、以下の食品が炭水化物の質が低いです。
- 精製度の高い穀類(白米・白パン・うどんなど)
- 甘味料(砂糖・ブドウ糖果糖液糖など)
- 清涼飲料水・甘いお菓子
- アルコール類
実際に、白米と玄米は食物繊維・ビタミンに以下のような差があります。どちらも炊飯後のめしの栄養価です。
100g当たり | 白米 | 玄米 |
エネルギー(kcal) | 156 | 152 |
食物繊維(g)※ | 0.3 | 1.5 |
ビタミンB1(mg) | 0.02 | 0.16 |
ナイアシン当量(mg) | 0.8 | 3.6 |
ビタミンB6(mg) | 0.02 | 0.21 |
パントテン酸(mg) | 0.25 | 0.65 |
※食物繊維はプロスキー変法の値です。
玄米は白米と比べ、食物繊維は約5倍、ビタミン類は多いもので10倍以上含まれています。エネルギーがほぼ変わらないのに対して、玄米の方が栄養価が高いのが分かります。
炭水化物は「量」ばかりを気にしてしまいがちです。しかしそれだと単に「炭水化物を摂らない」という間違った食生活を送ってしまいがちです。
炭水化物が多く含まれる食品


炭水化物は、以下のようなさまざまな食品に多く含まれています。
- 小麦粉
- パン
- 麺類
- ご飯(白米)
- とうもろこし
- いも類
- 砂糖
- 豆類
- 果物
- ドライフルーツ
- 菓子類
- 嗜好飲料
これらの食品の中でも、ほぼ糖質のものもあれば、食物繊維やビタミン・ミネラルを含むものもあります。
代表的な食品の栄養価は以下のとおりです。
100g当たり | エネルギー(kcal) | 炭水化物(g) | 食物繊維(g)※ |
薄力粉 | 349 | 73.1 | 2.5 |
食パン | 248 | 44.2 | 2.2 |
干うどん 茹 | 117 | 24.2 | 0.7 |
ご飯 | 156 | 34.6 | 0.3 |
とうもろこし | 341 | 63.3 | 9.0 |
じゃが芋 水煮 | 71 | 14.6 | 1.6 |
砂糖 | 391 | 99.3 | 0 |
小豆 茹 | 124 | 18.3 | 12.1 |
バナナ | 93 | 21.1 | 1.1 |
ドライマンゴー | 339 | 76.6 | 6.4 |
ウエハース | 439 | 74.5 | 1.2 |
梅酒 | 155 | 20.7 | – |
※食物繊維はプロスキー変法の値です。
食品は、炭水化物の質が高いものと、質が低いものの2つに分かれます。
この食品を知ることで、上手に炭水化物を取り入れることができます。
質が高い炭水化物の食品


以下は、食物繊維やビタミン・ミネラルの多い、積極的に摂りたい炭水化物の多い食品です。
精製度の低い穀類:玄米、胚芽米、発芽玄米、麦飯(押し麦入りご飯)、ライ麦パン、全粒粉パン、オートミール、雑穀米(キヌア、あわ、ひえ など)
芋類:さつまいも、じゃがいも、里芋、長芋
豆類:小豆、黒豆、大豆、レンズ豆、ひよこ豆
果物:全般
これらの食品は、炭水化物を控えたい人も、必要以上に控える必要はありません。適度に取り入れることをおすすめするします。血糖値の上昇を緩やかにする低GI食品であることも多いです。
炭水化物を控えたい方は、今食べている食品を、上記の食品に置き換えてみることもおすすめ。例えば、白米を雑穀米にするなど。
栄養価が高いため、上手に炭水化物を摂取することができます。
ただし、過剰な摂りすぎには注意です。具体的な量を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
主食について(ご飯)
芋の栄養
豆の栄養
果物の栄養
質が低い炭水化物の食品(控えたい)


一方で、糖質が中心で栄養価が低く、できれば控えめにしたい食品もあります。
代表的なものは以下の通りです。
精製度の高い穀類:白米、食パン、ロールパン、うどん、パスタ、薄力粉、もち
甘味料:砂糖、ブドウ糖果糖液糖、加糖シロップ
菓子類:クッキー・ケーキ・ドーナツなどのお菓子全般
飲料水:ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンクなどの清涼飲料水全般
アルコール類:全般
これらの食品は糖質が中心で、ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素がほとんど含まれていません。
摂りすぎると血糖値の急上昇や脂肪の蓄積を招き、肥満や生活習慣病のリスクが高まる可能性があります。
玄米などの未精製穀物と比べると、食物繊維やビタミンが少なく、血糖値を上げやすい傾向にあるため、「食べすぎに注意し、できれば食べ合わせや量を工夫すること」が大切です。



「白いもの」より「茶色いもの」を選ぼう!
白米→玄米、食パン→全粒粉パン、うどん→そば
炭水化物の1日の摂取量


炭水化物の1日の摂取量は、日本人の食事摂取基準(2025年版)で、1日に摂取する総エネルギー量の50〜65%を炭水化物から摂ることが推奨されています。
例:1日2,000kcalの場合の計算
たとえば、1日の必要エネルギーが2,000kcalの人の場合、求め方は以下の通りです。
①炭水化物から摂取するカロリーを算出
2,000kcal × 50~65% = 1,000~1,300kcal
1日のエネルギー量から炭水化物の比率を出します。
②炭水化物の重さ(g)に換算
1,000~1,300kcal ÷ 4kcal/g = 250~325g
炭水化物は1gあたり約4kcalなので、4で割ります。
③1食分の目安量に分ける
250~325g ÷3食 = 83~108g/1食
1日3食なので、3で割って1食分を出します。
1日2000kcalの人は、1食あたり約83~108gの炭水化物を摂るのが理想的ということになります。
1食分のご飯の目安量
2000kcalの場合「1食あたりの炭水化物は100g」と分かりました。しかし、それが実際どのくらいなのか、食材としてイメージしづらいと思います。
そこで、炭水化物の摂取量の目安になる、主食量を以下にまとめました。
この目安を参考にすることで、炭水化物の必要量が摂取できます。
1日のエネルギー量 | ご飯1食分(目安) |
1600kcal | 170g |
1800kcal | 200g |
2000kcal | 220g |
2200kcal | 240g |
2400kcal | 260g |
1日2000kcalの場合、ご飯の目安量は1食あたり約220gですが、このご飯だけで摂れる炭水化物量はおよそ76g程度です。これは、エネルギーの約50%にはやや届かない量です。
炭水化物は、ご飯やパン、麺類などの「主食」を思い浮かべがちですが、実際には主菜・副菜・果物・乳製品・調味料など多くの食品に含まれています。
色んな食材をバランスよく組み合わせることで、1日の炭水化物摂取量が50〜65%に到達する設計になります。



このご飯量は、私が病院で献立を作っていたときに、実際に提供していた量です。
おそらく、思っているよりも「主食はしっかり食べる必要がある」と感じるかもしれません。
炭水化物は、エネルギーの半分以上を担う非常に大切な栄養素です。体と脳がしっかり働くためにも、適量を意識して摂取しましょう。
炭水化物=太る、ではない


「炭水化物=太る」と思っている方は、意外と多いのではないでしょうか。
このようなイメージから、極端に糖質を制限し、主食をまったく食べないという人も少なくありません。
しかし実際には、炭水化物そのものが太る原因ではありません。
つまり、炭水化物であっても、量や食べ方によっては太ることもあるし、太らないこともあるということです。
たとえば──
問題なし
おにぎり2個(適量)を、バランスのとれた食事の一部として食べる:体脂肪として蓄積されやすい
菓子パン+ジュース+デザートなど、糖質に偏った食事:「量」「質」「組み合わせ」がとても重要なのです。
そもそも炭水化物自体のカロリーは高くありません。炭水化物は、1gあたり約4kcal。たんぱく質(1gあたり4kcal)と同じであり、脂質(9kcal)と比べると半分以下。つまり、炭水化物自体が「太る」わけではありません。
まとめ:炭水化物は「質」と「量」を意識して、上手に取り入れよう


この記事では、炭水化物の基本と上手な摂り方について解説しました。
要点をまとめると以下の通り。
- 炭水化物は、たんぱく質・脂質と並ぶ三大栄養素のひとつ
- 炭水化物は「糖質+食物繊維」で構成されている
- 「どんな炭水化物を選ぶか?」という質が大切
- 食べ過ぎも不足もNG。適量を意識することが重要
炭水化物は、体や脳を動かすための大切なエネルギー源です。
「太るのが心配だから」と極端に避けるのではなく、必要な量を、質の良い形で取り入れることが、健康的な食生活への第一歩です。
ダイエットや健康管理を目的とする場合も、まずは炭水化物の摂り方を見直してみましょう。



“抜く”のではなく、“整える”ことが大切です。
参考文献(2025年6月10日参照)
栄養価は、すべて日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より引用しています。