- 海藻って本当に体に良いの?
- どんな栄養が含まれているの?
- 効果的な摂り方が知りたい!
そんな疑問を感じたことはありませんか?
海藻は、低カロリーなのに栄養が豊富で、ダイエット中の方や健康志向の方にぴったりの食材です。
実は、美容や腸内環境の改善など、さまざまな健康効果が期待できる成分も含まれています。
そこでこの記事では、管理栄養士の視点から「海藻に含まれる栄養素」と「おすすめの摂り方」をわかりやすく解説します。

管理栄養士 まこ
- 30代の管理栄養士
- 急性期病院3年・給食委託会社8年
- 2つの病院とクリニックで栄養指導経験
- 1日平均4万食提供の委託給食の献立作成を担当
- 関西・関東の病院を中心とした給食提供実績
海藻をあまり意識してこなかった方も、ぜひ最後までご覧ください。
海藻に含まれる栄養と効果

海藻は、食物繊維、ミネラル、ビタミン類を豊富に含む優れた食品です。
特に注目したい栄養素は以下の通り。
- 食物繊維
- カリウム
- カルシウム
- 鉄
- ヨウ素
食物繊維
海藻には、食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は「第6の栄養素」とも呼ばれ、以下のようなさまざまな健康効果があります。
- 腸内環境を整える
- 血糖値の急上昇を防ぐ
- コレステロール値を下げる
食物繊維は大きく2種類に分けられます。
糖の吸収をゆるやかにするほか、コレステロールの排出を助ける働きがあります。
水溶性食物繊維:腸内でゲル状になり、腸を刺激して便通を促進し、老廃物の排出をサポートします。
不溶性食物繊維:海藻に含まれる食物繊維は、特に水溶性食物繊維が豊富です。中でも、フコイダンやアルギン酸は海藻類特有の成分であり、健康効果が注目されています。
フコイダンには免疫調整作用があり、抗がん作用などの効果も期待されています*1。主にワカメ、モズク、ノリなどの海藻に含まれています。
一方のアルギン酸には、コレステロールの吸収を抑えたり、血糖値の上昇をゆるやかにしたりする働きがあるとされています。昆布やワカメなどの褐藻類に多く含まれています。

海藻には、海藻からしかとれない成分が含まれています。
カリウム
海藻には、カリウムも多く含まれています。
カリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあり、以下のような健康効果が期待されています。
- 高血圧の予防
- むくみの改善
- 筋肉や神経の正常な働きをサポート
特に、食塩の摂取量が多くなりがちな現代の食生活では、ナトリウムとのバランスを保つために、カリウムの摂取が重要とされています。



海藻は、自然なカリウムの供給源として優れており、ワカメ、昆布、ひじきなどに多く含まれています。
カルシウム
海藻には、カルシウムも豊富に含まれています。
カルシウムは、骨や歯を丈夫に保つのに欠かせない栄養素で、骨粗しょう症の予防にも役立つとされています。
日本人はカルシウムの摂取量が不足しがちと言われており、毎日の食事で意識的に摂ることが大切です。



海藻の中では、ひじき、ワカメ、昆布などに多く含まれており、牛乳が苦手な方のカルシウム源としてもおすすめです。
鉄
海藻には、鉄分も含まれています。
鉄は、赤血球をつくるために必要な栄養素で、体のすみずみに酸素を届ける重要な役割を担っています。特に女性は、月経や妊娠による影響で鉄が不足しやすいため、意識して摂取することがすすめられます。
海藻に含まれる鉄は、「非ヘム鉄」と呼ばれる植物性の鉄分で、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と比べると吸収率がやや低いのが特徴です。ただし、ビタミンCやたんぱく質と一緒に摂ることで吸収率を高めることができます。



ひじきや青のりに多く含まれており、植物性食品の中でも鉄分の供給源として優れています。
なお、ひじきに含まれる鉄分は、以前より鉄分の含有量が少なくなっている点には注意が必要です。かつては鉄製の釜で加工されていたため鉄が多く含まれていました。近年ではステンレス製の釜が使用され、鉄の含有量が減りました。
ヨウ素
海藻には、ヨウ素が非常に多く含まれています。
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの材料となるミネラルで、以下のような働きがあります。
- 基礎代謝をサポートする
- 成長や発育を助ける
- エネルギーの産生に関わる
特に昆布やワカメなどの海藻類は、ヨウ素の供給源として非常に優秀で、日本人のヨウ素摂取量の多くは海藻からきているとも言われています。
ただし、ヨウ素は摂りすぎにも注意が必要な栄養素です。過剰に摂取すると、甲状腺機能に影響を与えることがあるため、過剰摂取には注意が必要です。



何でも摂りすぎは良くありません。
海藻の種類とそれぞれの栄養価・特徴


海藻にはさまざまな種類があります。主な海藻は以下の通り。
- 青のり
- あまのり
- うみぶどう
- まこんぶ
- てんぐさ
- ひじき
- もずく
- わかめ
それぞれの栄養価の違いは以下の通り。
100g当たり | 青のり | 干しのり | うみぶどう | まこんぶ乾 |
エネルギー(kcal) | 249 | 276 | 6 | 170 |
たんぱく質(g) | 21.4 | 30.7 | 0.5 | 5.1 |
脂質(g) | 3.3 | 2.2 | 0 | 1.0 |
炭水化物(g) | 15.7 | 17.7 | 0.5 | 9.7 |
食物繊維(g)※ | 35.2 | 31.2 | 0.8 | 27.1 |
カリウム(mg) | 2500 | 3100 | 39 | 6100 |
カルシウム(mg) | 750 | 140 | 34 | 780 |
鉄(mg) | 77.0 | 11.0 | 0.8 | 3.2 |
ヨウ素(µg) | 2700 | 1400 | 80 | 200000 |
塩分(g) | 8.1 | 1.5 | 0.8 | 6.6 |
100g当たり | てんぐさ素干し | ひじき乾ステンレス | もずく塩抜き | わかめ乾 |
エネルギー(kcal) | 194 | 180 | 4 | 172 |
たんぱく質(g) | 16.1 | 7.4 | 0.2 | 11.2 |
脂質(g) | 1.0 | 1.7 | 0.1 | 1.1 |
炭水化物(g) | 6.5 | 6.8 | 0.1 | 14.4 |
食物繊維(g)※ | 47.3 | 51.8 | 1.4 | 32.7 |
カリウム(mg) | 3100 | 6400 | 2 | 6000 |
カルシウム(mg) | 230 | 1000 | 22 | 830 |
鉄(mg) | 6.0 | 6.2 | 0.7 | 5.8 |
ヨウ素(µg) | 未測定 | 45000 | 未測定 | 10000 |
塩分(g) | 4.8 | 4.7 | 0.2 | 16.2 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
海藻の種類によっても含まれる栄養素にかなり差があります。
- 青のりは、食物繊維・カリウム・カルシウム・鉄・ヨウ素のすべてが高水準で、非常に栄養価の高い海藻です。特に鉄分は他の海藻の12倍以上含まれています。
- 海ぶどうは水分量が多く、他の海藻と比べて栄養価は全体的に低めです。食感や見た目を楽しむ食材として使われます。
- 昆布は、ヨウ素の含有量が圧倒的に多い。少量でも十分なヨウ素が摂れるため、摂取量には注意が必要です。
- ひじきは食物繊維の含有量が海藻の中で最も多く、カリウム・カルシウムもトップクラス。ヨウ素も多く含まれています。
- てんぐさは食物繊維とカリウムが豊富な海藻です。
- わかめは食物繊維・カリウム・カルシウム・ヨウ素が全体的に高くバランスの取れた海藻です。ただし、塩分量が非常に高いため、摂りすぎには注意が必要です。



海藻は種類によらず、共通して低カロリーです。
水戻しすると栄養価はどうなる?


乾燥海藻は、水に戻してから使うことが一般的ですが、水戻しによって栄養価が変化することがあります。
海藻に含まれるカリウムなどは、水に溶け出しやすく、長時間水に浸したり、何度も水を替えたりすると減少する可能性があります。
以下は、乾燥わかめと水戻し後の栄養価の比較です。
100g当たり | 乾燥わかめ | 水戻しわかめ |
エネルギー(kcal) | 172 | 20 |
たんぱく質(g) | 11.2 | 1.3 |
脂質(g) | 1.1 | 0.1 |
炭水化物(g) | 14.4 | 1.2 |
食物繊維(g)※ | 32.7 | 5.8 |
カリウム(mg) | 6000 | 440 |
カルシウム(mg) | 830 | 100 |
鉄(mg) | 5.8 | 0.4 |
ヨウ素(µg) | 10000 | 1300 |
塩分(g) | 16.2 | 0.7 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
水戻し後の栄養価を比べると、エネルギーの減少と比べてカリウムが大幅に減少しているのが分かります。
エネルギー:乾燥 172kcal → 水戻し 20kcal(約1/8)
約1/13)
カリウム:乾燥 6000mg → 水戻し 440mg(ただし、すべての栄養が失われるわけではありません。
適切な時間で水戻しすれば、食感を戻しつつ、栄養もしっかり摂取できます。



戻し汁に栄養が溶け出していることが多いため、スープや煮物などに活用するのもおすすめです。
ひじきの鉄釜とステンレス釜の違い


ひじきに含まれる鉄分は、製造時に使われる釜の種類によって大きく異なります。
昔ながらの「鉄釜」で炊き上げたひじきは、釜の鉄が溶け出すことで鉄分が多くなるのが特徴です。
一方、近年主流となっている「ステンレス釜」では、鉄分の溶出がないため、含有量は少なくなります。
以下は、釜の違いによる栄養価の比較です。
100g当たり | ひじき(鉄釜) | ひじき(ステンレス) |
エネルギー(kcal) | 186 | 180 |
たんぱく質(g) | 9.2 | 7.4 |
脂質(g) | 3.2 | 1.7 |
炭水化物(g) | 4.2 | 6.8 |
食物繊維(g)※ | 51.8 | 51.8 |
カリウム(mg) | 6400 | 6400 |
カルシウム(mg) | 1000 | 1000 |
鉄(mg) | 58.0 | 6.2 |
ヨウ素(µg) | 45000 | 45000 |
塩分(g) | 4.7 | 4.7 |
※食物繊維はプロスキー変法による値です。
表を見ると、鉄分は鉄釜製ひじきのほうが約9倍も多く含まれています。
昔は「鉄分を摂るならひじき」と言われていましたよね。現在では、製造工程の衛生面やコスト面からステンレス釜が主流になっています。
ひじきから鉄分を摂りたい方は、製造方法をよく確認しましょう。



現在、鉄釜のひじきは全体の5%ほどのようです。
海藻の適切な摂取量と食べすぎのリスク


海藻を日々の食事に取り入れる際、「どのくらい食べて大丈夫なのか」と迷う方もいるかもしれません。
実は、海藻には明確な1日の推奨摂取量は設けられていません。
管理栄養士が献立を考える際には、1日あたり乾燥1~3g程度の海藻を目安にすることが多いです。たとえば、以下のような量がちょうどよい1週間の量と言えるでしょう。
- ひじきの煮物(1回)
- 海藻サラダ(1回)
- 味噌汁にワカメ(数回)



どうでしょうか?この量取れているでしょうか?
ここでは海藻を摂る上で注意したい点について解説します。
ヨウ素の摂取量
海藻にはヨウ素が含まれており、その摂取量には注意が必要です。ヨウ素には「耐容上限量」という基準があり、これを超えて摂取すると健康への悪影響が出る可能性があるとされています。
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、ヨウ素の1日あたりの耐容上限量は3000μgとなっています。
この上限量は、以下の海藻の量に相当します。
- ゆでたひじき:約320g
- 生わかめ:約190g
- 刻み昆布:約1.4g
- 昆布だし(煮出し):約30g
上記はそれぞれでヨウ素3000μg程度の量です。
とくに「昆布だし」は、料理によく使われるため、知らず知らずのうちにヨウ素を多く摂ってしまうことも。かつお節やいりこ、椎茸など、他の素材のだしと組み合わせて使うのがおすすめです。
継続的に過剰に摂取することで健康リスクが高まるとされているため、必要以上に避ける必要もありません。



昆布以外の海藻については、ヨウ素の含有量はそれほど高くないため、過剰摂取をあまり心配しすぎる必要はないです。
塩分の摂取量
海藻類は、塩分の摂りすぎに繋がりやすい食材でもあります。
特に乾燥わかめや塩蔵(えんぞう)わかめ、塩蔵こんぶなどは、保存性を高めるために多くの塩分が含まれています。そのまま調理に使うと、知らないうちに塩分を摂りすぎてしまうことも。
健康のためには、以下のようなポイントに気をつけましょう。
- 塩蔵タイプの海藻は、調理前にしっかり水で戻し、塩抜きをする
- 乾燥タイプでも、戻したあとに軽く水洗いすると塩分を減らせる
- 汁物や煮物に使う場合は、全体の塩分量に気を配る
日本人の1日の塩分摂取の目標量は、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。海藻だけでなく、他の食品との合計にも注意が必要です。



海藻はミネラルや食物繊維が豊富で優れた食材です。塩分を控えつつ、バランスよく食べましょう。
海藻の特徴を活かしたおすすめの食べ方


海藻は栄養価が高く、毎日の食事に上手に取り入れたい食材です。
ここでは、海藻の特長を活かしたおすすめの食べ方をご紹介します。
ご飯に混ぜてワカメ・昆布ご飯に
海藻はご飯に混ぜて食べることで、手軽に食物繊維を摂ることができます。
食物繊維には、炭水化物による血糖値の急激な上昇を抑える働きがあるため、健康管理にも役立ちます。
忙しくて野菜を用意できないときは、わかめおにぎりやこんぶおにぎりなどにすると便利です。ご飯と一緒に海藻の栄養が摂れる、シンプルで続けやすい食べ方です。
ひじき入りの炊き込みご飯
ひじきを加えた炊き込みご飯も、海藻の栄養をおいしく取り入れる方法のひとつです。
ご飯と一緒にしっかりと食物繊維やミネラルが摂れます。
納豆とめかぶのネバネバご飯
納豆とめかぶをまぜてご飯と一緒に食べるのもおすすめです。特に朝食では野菜が不足しがちですが、この組み合わせなら食物繊維やミネラルも一緒に摂れます。
忙しい朝でも手軽に取り入れられるおすすめの食べ方です。
麺類にトッピング
麺類にワカメや昆布などの海藻をトッピングするのもおすすめ。
麺類はどうしても炭水化物のみの摂取になりがちな食事です。
海藻をトッピングするだけで、ミネラルや食物繊維をプラスすることができます。
味噌汁にワカメやあおさで手軽に
海藻は意識しないと摂ることを忘れてしまいやすい食材です。味噌汁に入れるだけであれば、面倒な調理が要らないので、一番手軽に海藻を摂ることができます。
まとめ:海藻をに日常的に上手に取り入れよう


この記事では、海藻の栄養や摂り方のポイントについて解説しました。
要点を振り返ると、以下の通りです。
- 海藻には食物繊維やミネラルが豊富に含まれている
- ひじきは製造方法によって鉄分の含有量が異なる
- 昆布はヨウ素が多いため、摂りすぎには注意が必要
海藻は、食物繊維・ミネラル・ビタミンの貴重な供給源であり、低カロリーなことからダイエットや健康管理を意識している方にもおすすめの食材です。
ただし、海藻は意識しないと摂取の機会が少ない食品でもあります。主食や副菜、汁物などに上手に組み合わせて取り入れる工夫をしていきましょう。
過剰摂取については昆布のヨウ素に注意が必要ですが、毎日少量ずつバランスよく食べていれば、過度に心配する必要はありません。
大切なのは、「何か一つに偏らず、さまざまな食材をバランスよく食べること」です。



海藻を無理なく日常の食事に取り入れていきましょう。


参考文献(2025年5月26日参照)
*1:海藻由来フコイダンのヒト末梢血単核球におけるサイトカイン産生及びガレクチン分子の発現に及ぼす影響
栄養価は、すべて日本食品標準成分表2020年版(八訂)より引用しています。